未来への提言
ここでは、今まで学んだことを踏まえて、理想的な避難所モデルと課題を解決するための提言を紹介します。
理想の避難所モデル
これまで私たちが述べてきたことを踏まえて、女性のための理想の避難所を考えました。
避難所モデルを詳しく見たい方は
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居住スペースの振り分け方法を詳しく知りたい方は
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まず大切なことは、避難所運営に女性が参加することです。避難所のリーダーに女性がいないと、女性目線の配慮が行われず、女性の立場がますます弱くなってしまいます。一人でリーダーに名乗り出るのは勇気がいるかもしれませんが、仲間を誘えば立候補しやすくなります。複数人でも良いので、積極的に避難所自治に関わっていきましょう。それに加えて、性別による固定的役割分担を防ぐ取り組みを実施することが大切です。避難所では、炊き出しといった家事と似たような仕事は女性のみで担当し、しかも無償で行わなければならないことが多く、女性の負担が重くなっています。そのため、炊き出しは男性と女性両方で担当するようにすべきです。
今回私たちが想定したのは、30m×50m=1500㎡の学校体育館に約180人が避難するケースです。避難者の飲料水や食料を保管するスペースや物資の配布場所も必要であるため、居住以外のスペースに901.5㎡を確保しました。校舎は災害による被害が大きく使えないものとします。災害が発生してから1週間しか経っておらず、電気・水道・ガスはまだ復旧していない状況を想定しています。
なお、想定を超える避難者が来ることも想定し、離れた自治体と協定を締結していくことも必要です。実際、江戸川区では長い避難生活に耐えることが難しい高齢者や障害者などを優先して受け入れてもらうため、2015年11月に茨城県城里町と協定を締結しました。
一人当たりのスペースはスフィア基準を参考に原則2m×1.75m=3.5㎡としました。しかし、子どもと大人では体格が異なることを考慮して、子ども1人当たりのスペースは以下のように定めています。
0歳~2歳:0㎡
3歳~5歳:1.75㎡
6歳~:3.5㎡
また、物資の受け取りやすさ、トイレの行きやすさを考慮し、通路を多めに設けました。
男女ともにマルチスペースを設けることで、限られた避難所空間を効率的に活用できるよう工夫しました。女性用マルチスペースは、更衣スペース・授乳スペース・化粧スペースという3つの空間に分かれています。それぞれの空間はパーテーションによって仕切られており、女性は周りの目を気にすることなく授乳や着替え、化粧ができます。また、パーテーションは可動式になっているため、混み具合に応じてそれぞれのスペースの広さを変えることができます。避難所で化粧は贅沢だと感じる方もいるかもしれません。しかし、東北大学の阿部恒之氏らによると、化粧をすることで免疫系のホルモンが増加しストレスホルモンが減少したということです。また、他人に化粧をしていない顔を見せることをストレスに感じる女性は多いため、化粧スペースを設けました。
断水が続いているため、体育館に備え付けられているトイレは簡易トイレを取り付けて使用します。しかし、それだけではトイレの数が足りないため、校庭に仮設トイレを設置しました。スフィア基準に基づき、女性用仮設トイレと男性用仮設トイレの比は3:1にし、女性用トイレの混雑を緩和しました。また、体育館に必ずしも多目的トイレがあるとは限らないため、校庭に多目的トイレとして利用できる仮設トイレを設置します。女性用トイレのそばに相談室を設け、女性相談員を配置することで、女性特有の問題を相談しやすくしました。相談室は男性も利用することができます。また、不安や悩み、女性に対する暴力等に対する相談窓口や相談室にいる相談員についての情報を伝言板に掲載します。
女性専用物資は女性が配布することに加え、配布場所を男性の居住スペースと離すことで男性の目を気にすることなく物資を受け取れるようにしました。
内閣府男女共同参画局が2019年10月に都道府県に通知した「台風 19 号における男女共同参画の視点からの災害対応について(依頼)」にも、女性用トイレを多めに設置することや相談体制の整備、相談窓口の周知、女性用品の女性の担当者による配布が盛り込まれています。
校庭にある入浴場、洗濯・物干しスペース、トイレのテントには、電池や太陽光で光るライトを取り付けることで、女性が暗い時間帯でも安心して過ごせるようにしました。
更衣室や授乳室は、別の部屋を用意することが難しい場合には、避難所内にテントを設営することでプライバシーを確保する工夫をすると良いでしょう。実際、東京新聞 2019年10月19日 夕刊によると、台風19号で被害を受けた地域では、テントを授乳や着替えのための女性専用スペースとして活用した避難所があったと言います。
また、女性は出入り口から見えにくい所でまとまることで、性暴力の被害に遭いにくい環境で安心して過ごせる避難所を目指しました。
避難所のそれぞれのスペースにあるとよいものを以下に示します。
マルチスペース
- ・鏡
- ・相談室の予約用紙
- ・避難所運営に関する意見箱
- ・着替え用の服
- ・着替え用の下着
- ・軍手
- ・帽子
- ・長靴
- ・マスク
- ・オムツ
- ・ティッシュ
- ・おしりふき
- ・アイマスク
- ・耳栓
- ・タオル
棚などに入れておき、避難者が自由に取れるようになっていると良いでしょう。
●トイレ
- ・消臭剤
- ・消毒液
女性用トイレには、以下のものも必要です。
- ・サニタリーボックス
- ・女性用品
●入浴場
- ・着替え用の服
- ・着替え用の下着
- ・タオル
- ・石鹸
- ・化粧水
- ・リンスインシャンプー
- ・洗顔フォーム
これらに加え、女性の入浴場にはメイク落としを、男性の入浴場には髭剃りを用意しておくと良いでしょう。
●炊き出しスペース
- ・水
- ・ガスコンロ
- ・消毒液
- ・ラップ
- ・紙皿
- ・割りばし
- ・プラスチックスプーン
もし校舎が安全な状態であるなど、ほかに使える個室がある場合は、以下の部屋を設置することが望ましいです。
- ・授乳室
- ・女性専用の物干し場
- ・子供の部屋
- ・要支援者の部屋
- ・調理場
- ・乳幼児とその親の部屋
- ・救護室
- ・ペットと過ごせる部屋
女性が安心して過ごせる避難所にしていくためには、男性の理解と協力が不可欠です。私たちは、女性への配慮に手厚い避難所の設備に男性が不満をもつことがないよう工夫する必要があるのではないか、という思いから、男女の体格の差を考慮して、男性に配る食事の量が女性とくらべて多くなるように工夫しました。
このように、1人1人のスペースにゆとりを持ち、ストレスを感じにくい避難所にすることが大切です。